オタクは世界を救えない

『ぐらんぶる』感想、社会人オタクが大学生の思い出とこれからの話をする

ぐらんぶる(1) (アフタヌーンコミックス)

 THE大学生漫画こと『ぐらんぶる』。そのアニメ版が始まりましたね。実際良い作品だし、ギャグにかけては一級品の面白さがあると思う。ただその反面、もう大学生には戻れないことを痛感してしまう自分がいる。そのことを今から語らせてほしい。

概要

 漫画版グランブルーファンタジー。

 今作は『バカとテストと召喚獣』で知られる井上堅二が原作ということで有名。ちなみに作画の吉岡公威はコミカライズメインの作家ということで、オリジナルは恐らく今回が初? 甘ブリのコミカライズなんかでそれなりの評価を得ていることから、原作・作画共に実力派なことが伺える。

 ストーリーとしては、大学生になった主人公の北原伊織が裸と酒を崇拝するダイビングサークル「Peek a Boo(ピーカブー)」で日夜飲み狂い、友人や女と思いつく限りの青春を満喫するという話。すごいのが、それこそ文字通り大学生活におけるイベントを片っ端から取り入れているという点。サークル、友人、女、酒、海、講義、単位、研究室、バイト、合コン、文化祭、オタク、まあいろいろありますね。マジで全部入ってる。ちなみに今の俺の人生にはオタクしかない。

サークル

 まずお話の中心となるのがこれ。「Peek a Boo」は通称「Pab」と略されるダイビングサークルで、あってないようなストーリーは基本的にこのサークル活動が発端として始まる。

 かくいう俺も、大学生時代はオタクサークルに入っていた。ほとんど男しかいないという点において、Pabと共通している。本来の活動(件のオタサーは漫研であり、本業は漫画製作である)をほとんど行わずに遊んでばかりというのも、Pabと大差ない。まあPabは酒盛りがメインのそこだけ見ればパリピ感溢れる集団だが、内容自体はやはりオタク向けを意識しているのか、登場する男キャラは女っ気が少なく、SNS上でよく見かけるストロングゼロとエナドリを愛飲しているタイプのそれに近い。俺がサークルでやったことといえば、カードゲームとボードゲームとオタクトークぐらいだが、問題はそこではない。大学生活において、何か一つに打ち込むのではなく、だらっと集まってガッとその一瞬を楽しむ。それ自体にわりと意味があると思う。

 今の俺はどうだろうか。人生の大半を週五日労働に縛り付けられ、少ない自由時間は惰性で続けるソシャゲに浪費される。一念発起して創作に打ち込もうとしても、だいたい半月もせずに挫折する。それでも楽しいと胸を張って言えるような楽観的な人間ならいいが、中途半端に意識の高いオタクは、楽しかったあの頃と比較して悲しくなり、虚無感を埋めるために震えてシコるばかりである。生きる意味 is 皆無。

 酒は人を救ってくれる。大学生の頃から今に至るまで俺はアルコールの類がわりと好きだが、ぐらんぶるを見てるとその意味合いが違うことがわかる。
 ぐらんぶるの酒は、基本的に盛り上がるシーンの象徴だ。まあライターで火が付くほどの酒を一気飲みするヤツはさすがにリアルじゃそんなにいないだろうが、そこはフィクションなのでご愛嬌。バカみたいに酔ってバカみたいに騒ぐの、めっちゃ楽しいんでね。学生時代は安い居酒屋の飲み放題でアホほどに飲んで、二次会のカラオケでオタクソングを歌いながら盛り上がったのがいい思い出。

 それが今は、酒を飲む理由が虚無を埋めるためになりつつある。することねえし酒を飲むか、みたいな。社会人になったから良い店で酒を飲めるようになったし、食べ飲み放題じゃなくても気軽にメニューを頼めるようになった。けれどもいくら金を出したところで、あの頃の盛り上がりは取り戻せない。落ち着いて飲めるようになったことは果たして良いことなのか? ウーロン茶を飲むようなテンションでハイボールを飲むことは果たして成長なのか? 俺にはわからない。

 例えば、今俺たちがPabみたいな頭の悪い飲み会を開催したとする。けどそれで彼らみたいに盛り上がれるかというと、俺にはそんな自信はない。ぐらんぶるで行われる飲みは決してその凶悪だけが面白いわけじゃなく、そのメンツの全力で大学生をしているから面白いのだと、俺は思う。

友人

 サークル内に限らず、友人関係は大学生活でかなり重要な位置を占める。ぐらんぶるでも伊織には学部の友人が何人かいて、サークル外のイベントではそいつらと関わることが多い。

 ちなみに伊織の交友関係だが、これといって共通の趣味というものはない。一応共通点として童貞が多いことが挙げられるが、そこは置いておこう。
 クラスが一緒だとかの理由で、趣味も信条も異なる不特定多数の人間が関わる環境は、学生ぐらいだとよく言われる。実際、社会人にもなると職場の人間とプライベートでまで関わることはほとんどないし、かといって職場以外の人間と関わろうとすれば、なにかしらのコミュニティに入ることになるので、必然的に似たような趣味の人間があつまることになる。というかぶっちゃけ、社会人になると友達が減る。当たり前である。そもそもプライベートの時間が減るわけだからね。だからそういうのに積極的な人間以外は、だいたい交友関係が虚無になると思う。オタクにも最近はコミュ強が増えている印象だが、やはり人種的にはぼっち勢もかなり多いと思う。

 で、俺が何を言いたいかっていうと、現に俺の交友関係もどんどん狭まっていっているということ。まあ元々そんなに広くないですけどね。ただやっぱり、就職すると地方に行くヤツとか、出勤日の関係で気軽には会えなくなるヤツとか、そういうのがほとんどになってくる。なにより大学生時代は、平日の昼間に適当な招集をかけても人が集まるが、社会人でそんなことは稀である。俺はありがたいことに職場がホワイトなので、飲みの誘いでもあれば極力行くようにはしているが、やはり出席率は低下するばかりだ。あと数年もして、集まること自体がなくなる日も来るのかと考えると、非常に悩ましい。

 もはやぐらんぶるに関係ない話になるが、これからの人生、元々の交友関係を維持するのではなくて新たなコミュニティに参加することを考えなくてはいけないのかもしれない。かつてバカにしていた、コミュニティから嫌われないように当たり障りのないことばかりをツイッター上で呟く社会人オタクになってしまう日も近いかもしれない。

 大学生になったら自然と彼女ができるらしいという話を本気にしている高校生も、中にはいるらしい。まあ伊織の女関係はさすがフィクションというところで恵まれまくっているが、そこまでいかなくとも大学生といえばセックスをする生き物と称されることは少なくない。

 俺もかつてはラブライブ!声優にガチ恋をして甘酸っぱい思いをした経験のあるオタクなので、オタクの恋愛事情に関しては詳しい方である。彼女を作る作らないはともかくとして、大学生はだいたいセックスのことを考えているので、伊織やその周囲の童貞たちが女関係の話題で盛り上がる場面に共感できる人間は多いと思う。

 ただ、社会人にもなるとやはり「声優さんと結婚したい!」なんてことを言うことも難しくなってくる。そうすると、童貞も二種類のパターンに分かれるように思う。
 一つは、もう一生童貞でよくね?派。生粋のオタクに多い。最近は世論も味方し、生涯独身という選択肢はかなり現実味を帯びている。
 もう一つは、結婚して落ち着きたい……派。自分が社会に沿った人間だと誤解しているオタクに多い。結婚自体は悪いことではないので、したいならすればいいと思う。ただし声優と結婚はできない。
 俺は言うまでもなく生粋の前者なのだけど、正直ここにおいて問題なのは、結婚しないことではない。生涯独身でいてどうすんの?というテーマを常につき続けられることだと思う。

 ぐらんぶるには、今村耕平というオタクが登場する。大学内では伊織の一番の友人ポジションであり、オタクである。
 それこそ生粋のオタクである彼は、「二次元美少女と結婚したい」と叫び、水樹奈々を崇拝している。フィクション風にデフォルメされたオタクキャラではあるが、現実にも似たようなオタクは大勢いるだろう。まあそうやって全力でオタクをすることはわりと楽しいので、キャラとしては嫌いじゃない。しかも耕平はガチオタクキャラのわりに、酒に強く、Pabの悪ノリについていく度量があり、人並みのコミュニケーションを取る能力があるので、いわばオタクとリア充のハイブリッドと呼ばれるタイプ。こういうヤツが友達にいると楽しいと思う。

 だが問題は、耕平が俺のように社会人になってからだ。彼は数十年後も今の調子でオタクを続けていられるだろうか? 俺には小太りでハゲのおっさんになっても純粋なオタクでいる自信がない。というか今の時点でわりと捻くれたオタクなので、この先どうなるのかとかマジでわからない。かといって、変に妥協してセンスのないマンコと結婚するのだけは避けたい。だからどうにかしてオタクとして何かを成し遂げたいと思ってこのブログをやってるまである。あわよくば承認欲求も満たしたいのでPVも伸びてくれるとありがたい。
 余談だが、この記事を書く一週間ぐらい前にドメインをいじくってたら色々な調査不足が相まってブログパワーがガタ落ちし、PV数が以前の5分の1まで下がるとかいう悲劇が起こってしまった。このままでいくと明日頃には10分の1まで下がると思う。俺が幸せになれる日は来るのか?

まとめ

 そういうわけで、ぐらんぶるがどれほどの鬱作品なのか、わかってもらえただろうか。あと千紗の声合ってなくない? それからアニメの方はギャグのテンポがちょっと悪い気がする。裸とかアルコールの暴力によるシーンを、原作では一コマで上手く描いてるので、それを表現しきれていないのでは? と思う。ちなみに俺は文化祭編が一番好きなので、アニメではそこを期待ですね。
 上ではあんまり作品自体に触れてないなあと思ったので、ここでちょっと触ってみました。はい。