オタクは世界を救えない

『ペンギン・ハイウェイ』ネタバレ感想、細かいことは分からないからおっぱいの話をしよう

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

 ペンギンハイウェイ、見てきたんですね。まあ率直に感想を言うとおっぱいで、その次にSF部分の方を真面目に考えるとぶっちゃけ理解できない部分がすごい多かった。
 俺の頭が悪すぎるせいもあるとは思うけど、たぶん世界観の真相をちゃんと理解するのは結構難しい作品だし、そもそも理解させようという意図もあんまりない感じ。

 『怒りそうになったらおっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心が大変平和になるんだ』とアオヤマ少年も言っているので、俺はとりあえずおっぱいのことを考えて心を平和にしようと思う。けどおっぱいのことだけ語るのには勿体ない部分の多い作品でもあるので、心に余裕があったら他のことも書こうと思う。

概要

 今作は原作が森見登美彦。監督が石田祐康。脚本が上田誠
 森見登美彦といえば『四畳半神話大系』、『夜は短し歩けよ乙女』、『有頂天家族』等で知られるヒットメーカーだが生憎俺はまったく知らなかったのでもう全然そういう話はできない。まあ好きな人は多いだろうからそれ目当ての集客は見込めるだろう。
 監督と脚本もほとんど事前情報なかったので今回は変なこと考えずにそのまま見た感じ。なんなら最初はオリジナルのアニメだと思ってたぐらいですね。(一応脚本は以前の森見作品の脚本も担当していたらしいとwiki情報)

 ただまあ見終わった後にちょろちょろ調べてみたら、こういう記事が出てきたので読んでみた。

「ペンギン・ハイウェイ」原作者・森見登美彦×石田祐康監督対談 一度断ったアニメ化オファーをOKした理由とは | アニメ!アニメ!

 まあ森見作品の中でも異色というか、作者本人にとっても特別な作品だそうで。特に主人公のアオヤマ君の描き方をかなり重要視しているのは、まあ主人公だし当然なんだろうけど、なるほどなあといった感じ。作品自体も森見登美彦の少年時代に原点を置いてるだかなんだかで、まあ要するに小学四年生の視点で話が進んでいくというのにはおねしょた以外の意味がちゃんとあるんだということを覚えておきたい。

おっぱい

 なにはともあれおっぱい。猿でもわかるぐらいおっぱいの描き方が上手い作品。おっぱいの見た目だけでなく、子供から見たおっぱいの不思議さ、魅力、包容力を上手く表現してる。しかしこれはよくあるポルノアニメ的なそれとは違い、シコるためのおっぱいではなく(もちろんシコれるが)、子供の視点を通したおっぱいであることが重要。あれだろ、小学四年生ってのはまだ精通もしていないぐらいだからつまりそういうこと。

 思い返してみると、おっぱいがぷるんぷるんとかするシーンはそんなになかったし、そもそもお姉さんはアニメ的平均で見ればそんなにおっぱいが大きいわけではない。どちらかといえば静のおっぱい。それがなぜそんなに魅力的なのかというと、これはアオヤマ君も言っているけど、「お母さんのではそんなふうに思わないのに」、つまりお姉さんそのものが魅力的なキャラクターだからという割と当たり前の理由に決着する。

 だいたい、この作品は作画からして純粋にクオリティが高い。特にキャラクターの表情の描き方がずば抜けてヤバい。女は愛嬌っていうけど、これはガチなんだよな。お姉さんってぶっちゃけ普通の立ち絵だけだとそこまでって感じなんだけど、動いて表情がついて笑顔になるとかなり強いことになる。表情の中に年上の余裕もあれば、アオヤマ君の代わりに子供っぽい無邪気なところもある。実験でいろんなもんを投げまくってペンギンにしてたところとかかなり好き。お姉さんのころころ揺れ動くタイプの性格も相まって、この辺の作画によりかなりお姉さんの好感度が増したところ。キャラへの評価とおっぱいへの評価はわりと比例するので、こんだけおっぱいおっぱい騒がれてるのはそれだけお姉さんがオタクの心を掴んだということで間違いない。

アオヤマ君

 まず、冒頭の自己紹介の時点でキャラの味が出し切れているのがすごい。確かに頭が良くて真面目で偉い小学生なのは間違いないけど、わざわざそれを語らせた上でおっぱいネタに触れて鼻につかない感じで仕上げたのはキャラの魅力的にもストーリーの展開的にもかなりお上手。

 このアオヤマ君、良い意味でフィクションに出てくる子供なんだよな。正直俺はガキに感情移入するのとか嫌だから、主人公が子供とか嫌いだし、なんならおねしょたも好きじゃないんだけど、アオヤマ君は小学生の視点を持ちながらも大変賢い立ち回りをしてくれるので、性格の歪んだオタクとしても安心して主人公を任せられる器だった。おっぱいネタや細かい言動からはユーモアも感じられるし、かといって「これ子供の皮を被った大人じゃね?」とはいかないぐらいの作り方も上手い。金をかけただけじゃ生まれないクオリティが詰まってる。

その他のキャラについて

 不快なキャラが少ないのはかなり好印象。CV釘宮のウチダくんはどうせ後半ベンチ入りするキャラだろうと思ってたら意外と活躍する味のある男だったし、主人公の父親はアドバイザーとして金を出して雇ってもいいレベル。あとペンギンは普通に可愛い。
 スズキ君の評価は分かれるところか。俺は頭の悪いガキが嫌いだから当然スズキ君も嫌いだし、アオヤマ君が強すぎるせいでバランスを取るためにスズキ君の所業もどんどん際どいものになっていく過程がなんともって感じ。ただ彼の行動原理はかなり単純で、ストーリー的にそういう役が必要だったのはもちろんだし、最終的には味方についてくれるジャイアンポジションだから、気にしなければ気にならない程度のそれだと思ってる。
 あとハマモトさんの父親が無能気味だったのはちょっとかわいそうだったね。実働部隊の研究者チームってことで、もうちょっと大人のかっこよさを見せてくれるキャラでもよかったと思う。

 で、忘れちゃいけないのがハマモトさん。お姉さんの影に隠れてあんまり目立ってないけど、彼女もまたおっぱいの一人。アオヤマ君がお姉さんにばかり気を取られて平らな胸板の重要性に気付かない辺りは、やはりまだまだ若いなと思う。
 まあ要するにハマモトさんも普通に可愛い。上の方でさんざん書いたけど、キャラの表情の付け方がクソ上手いのでハマモトさんもクソ可愛く見える。一応めちゃくちゃ頭が良くてアオヤマ君と肩を並べる存在みたいな立ち位置ではあるが、意中の男の子へのアプローチや自分の研究を隠したいというムーブが年相応でロリやんけってなる。ストーリー的には結局根幹には関われないので残念だが、お姉さんが真意を隠して動くタイプのキャラで謎まみれなのに対してこっちは子供らしい一貫性があるので、見てる側のメンタル的にも、ストーリーを動かす役としても、だいぶ重要だったんじゃなかろうか。俺としてはお姉さんと一緒に二本柱に数えられてもいいと思う。幼女だし。

世界の果て

 SF部分について。そもそもこれはSFなのか、ただのファンタジーなのか、微妙なところ。途中で海やペンギンやお姉さんの関係をガチで考察していたところはSFって感じで、つまり謎を解明していく過程はSFなんだけど、ただこの作品はストーリーが終わった時点で謎が解明しきれていないという点で、ファンタジー色もかなり強いと俺は思う。

 一応、考察というかお話の整理もしたい。

 まず謎の中心は、海の存在と、ペンギンの存在と、お姉さんの存在。この三つが相互に関係して存在しているということ。
 海は世界の穴だそうで、ペンギンはそれを修復する者。お姉さんはペンギンを出して修復を先導する役割。ただペンギンやお姉さんは海からエネルギーを貰っているので、海を修復しきってしまうと消えてしまう。エネルギーってのはたぶん世界の穴を修復しろっていう要請みたいなもので、修復する必要がなければペンギンやお姉さんも存在する必要がないってことなんでしょう。

 ただ物語中でちゃんと語られている結末として、「そもそもなんで海が出来たのか?」、「なんでお姉さんが修復者になったのか?」は語られていない。この辺がファンタジーになっていて、たぶんその真相はアオヤマ君が大人になってから解明するんだと思う。これは小学四年生が世界の果てを解明して終わる話ではなくて、これから世界の果てを解明する大人が小学四年生だった頃の話なんじゃないかと思う。まあ俺はそういう系のテーマ好きだけどね。実際、話の中でもしきりに子供の手に負えないものだってことを強調されているし、アオヤマ少年もそれを自覚している。なんだけど、お姉さんがけしかけたとおり、アオヤマ少年はこれからの人生を賭けてお姉さんを見つけるために研究し続けるわけで、考える頭のないオタクが見終わった時点で意味不明状態になってしまうのは当然とも言えるでしょう。

 で、ちょっと考えた部分については書こうと思う。

 割と話の最初の方で、世界の果ての話を父親としたと思う。世界の果てはどっか遠い外側にあるんじゃなく、例えば袋を内側にひっくり返したように、世界の内側に存在しているんじゃないか? という考え方。
 まあ作中でも触れられているけど、つまりこの袋をひっくり返した内側にあたる部分が「海」だとして、海=世界の果てとする。
 でも海は作中じゃ「世界の穴」とも表現されていて、修復される扱いも受けているので、世界の果てってのがどんだけヤバいところなのかも計り知れる。実際、海の中に入ると自然法則はめちゃくちゃで、世界の果てが危険な場所なのもわかる。その割に海の中が綺麗に描かれていて、お姉さんの言う「海辺の街(だっけ)」が良い印象で語られているのは、研究者目線で世界の果てがやっぱり魅力的な場所だっていうのを印象付けていると思う。

 そしてペンギンとお姉さんについても、世界の果てからエネルギーを貰っているだけあって自然法則がイカれた存在。ちなみにお姉さんがペンギンを出すと弱ってしまうのは、ペンギンを出すことでエネルギーの源である海を自分で破壊してしまうから。ならペンギンを出さないでエネルギーを温存しておくとジャバウォックが出てくるのは、本来破壊するべき海(世界の果て)が膨張しっぱなしになって普通に危険ですよの意じゃないだろうか。お姉さんが海から離れすぎたときにジャバウォックが出てきそうになったのも、修復者であるお姉さんによる抑止がなくなったせいで海がエネルギーを増したからとも考えられる。
 まあ海がエネルギーを増したならお姉さんも強くなっていいんじゃないかとか、お姉さんがジャバウォック出してるのに、弱ったお姉さんから強そうなジャバウォックが出てくるのはどういうことなんだとか、いろいろ謎はある。あと明るさで出てくるものが違うやつとか今思い出して余計わからなくなったこれはもうやめよう。

 ただ、海を通っている町の川が同じところをぐるぐる回って円環の理を描いているのとか、海とペンギンとお姉さんによる相互的な関係性を考えると、それらのSF要素が複雑にループしてそういう事態になってるんだという話は作れそう。どういう関係性があればそうなるのかわからんけど。でも問題が起こった後に例の川は干上がってたらしいので、まあ消えるときは全部一緒だし、いっぱい変なのが出てくるときはペンギンもジャバウォックもいっぱい出てくるんじゃないんですかね。もうわかんねーな。

まとめ

 例のインタビューによると、
「自分のまわりに不思議なものがあるんじゃないかと考えている子どもたちに是非見てほしいです。要するに、子どもの頃の僕に見せてあげたいんです。
~中略~
もちろん、大人でも不思議なものを求める感覚はあるでしょうから、大人の方にも見ていただきたいです」
 だそうで。世界の果ては住宅地のその辺にあるかもしれないらしいです。おっぱいと同じくらい世界の果てのことを考えるのが楽しいアニメ。ぶっちゃけ見る前はファミリー向けも視野に入れた爽やか系アニメだと思ってたから、オタク向けとして面白い作品で普通に良かったんじゃないですかね。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)