オタクは世界を救えない

『魔法少女リリカルなのは Detonation 』感想、キリエが一人でちゃんとできた話をする

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 いや、なんか面白かったんでそういう話をしようと思う。

 ただその面白いってやつが、前編だとドンパチやってた面白さがほとんどでキリエとイリスの絡みが個人的にツボって意味だったんだけど、後編はその辺に加えてシナリオ的にもかなり優秀でじわっとくる見せ場も結構いっぱいあったのでそういうところがすごいよって話。個人的に一番好きなのが前編に引き続きキリエのくだりなんだけど、それ以外も結構よかった。

一応前の感想を

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概要

 まあ軽く話をまとめると、暴走したユーリと黒幕だったイリスを止めるためにみんなで協力しよう!ってなって、長めに尺を取られた回想によって実はイリスとユーリがエルトリアの復活のために数十年前に活動していたことが発覚して、ついでにマテリアルズもその頃ユーリに拾われた猫だったことが発覚。
 さらにユーリを追い詰めたと思ったら今度は真の黒幕である所長(名前忘れた)が現れ、イリスまでも騙されていたことが発覚。最終的に所長VSなのは達ユーリVSマテリアルズイリスVSキリエと各所で殴り合いが発生した末になのはさんが宇宙に打ち上げられ幼い頃のなのはさんとの自分語りフェイズを経て地球に平和が戻る。そしてエルトリアには草が生えた。終わり。

シナリオ的見せ場について

 もう戦闘シーンがすげえってことは前編でも言い飽きたのでシナリオについてだけ話そうと思う。

 まず今作のシナリオは軸が多すぎてよくこれを一作にまとめようと思ったなと感じる。まあまとめられてないから前後編にはなってるのだけど。
 そもそも惑星エルトリアの話と一言で言っても、その中にはキリエとアミティエの姉妹の話、イリスとユーリの過去の話、そしてマテリアルズの話と大きく分けて三つの話が内包されており、それぞれが良い感じに関わり合いつつも一つの話として独立もできる程度であるから本当に内容がパンパン。ぶっちゃけマテリアルズのくだりを削った方がシンプルになるのではと何度も思ったけど、キャラ的にあの三人を削るのは勿体ない上に見せ場もよくできてたからマジで削りどころがわからない。

 しかもそこへなのは達の見せ場も用意しつつ最後には珍しくなのはさんの内面を掘り下げて十年来のなのはファンに衝撃を与えていく展開。マジで盛り盛りのパンパンだね。よく綺麗にまとめました。

キリエについて

 前編でヘタレのクソ雑魚扱いを受けた上、黒幕の手を引いてみんなに迷惑をかけただけの存在であるところのキリエは肩身の狭い思いをし続けた110分。肩身が狭すぎて登場シーンも姉に比べてかなり少ない彼女だったけれども、ちゃんと一番いいところで見せ場をもらって挿入歌もついてきてシナリオ的にはかなり重要な位置だったと思う。

 何が好きって、なんていっても「自分じゃなんにも決断できない。弱くて、泣き虫で、冴えない子」で「一人じゃなんにもできない」とイリスの分身から煽られまくったキリエが、最後まで一人でイリスと戦い続けたところ。今作はいかんせん味方サイドの人数がバカ多いのでペア以上で敵と戦うことが多かった彼女らの中で、キリエだけは最後まで誰にも助けてもらわずに一人で戦い抜いたのが偉い。そして所長に騙されていたイリスを、イリスに騙されていたキリエが救うのも偉い。挿入歌に合わせて戦うのも偉い。ついでに言うとキリエはイリスを倒してないんだよね、なのはさんが色々終わらせてくれてイリスが止まるまで別にキリエは勝ててないし、なんなら戦闘シーンで有利になった描写もない。ただ愚直に一人でやるべきことを成し遂げた感じ。よくやりました。

イリスとユーリについて

 ぶっちゃけ過去のあれでイリスが騙されたのはちょっとユーリに濡れ衣を着せすぎだと思う昨今。まあそこはいちいち突っ込むところではないのでいいとして、やはりシナリオ的にはイリスがメインヒロインというか、一番重要なポジションだったのだと思う。ユーリに裏切られたと思ったら実は所長に騙されていただけのイリスが、今度はキリエを騙してあんなことやこんなことを……と、この辺はマジでぐちゃぐちゃになっていてわけわかめ。でもそのイリスに対してキリエが「嘘でもいいから一緒にいてくれて嬉しかった」とシンプルにぶん殴ることで負の連鎖をぶった切る辺りやはりキリエちゃんの物語。

 まあエルトリア勢の負の連鎖については結局所長がすべて悪いのであれなんだけど、それをイリスとキリエがややこしくしたっていうのはある。ユーリも正直「私が全部やりました」とかいうアスペ告白したからイリスが誤解したっていう意味合いでやらかしてる感がある。でもそういうみんながみんなぐちゃぐちゃした末にまたエルトリアで再会していろんなことをやり直すっていうのがいいよね。俺はみんなが荒廃したエルトリアに帰ってきて「ただいま」を言った瞬間にじわっときたね。結局みんなちょっとずつすれ違った結果に殴り合いをしていただけで、エルトリアのために戦っていたのは同じなんですね。

子供なのはとの会話について

 大きい方も子供なのはで小さい方はもっと子供のなのは。小さい方のなのはは「自分のことが好きになれないんだね、だから自分のためじゃなくて人のために戦うんだね」と俺のうろ覚えの記憶の中で言っている。そのちょっと前になのは自身が「立場が違くて分かり合えないときがある。折り合いがつかないときがある。私たちが持っているのはそんなときに大切なものを守るための力」とやはりうろ覚えで言っている。
 なのはさんのバックグラウンドがほとんど掘り下げられることのないシリーズにおいて、なぜ彼女がここまで他人の問題に首を突っ込んで戦うのかという疑問がここにきて解決されたのはすごい。しかも直球なので猿にもわかりやすくて大変よろしい。

 今作だと、エルトリア勢がやっぱりエルトリアのために戦ったり、仲間や友人のために戦ったり、そこでやっぱり折り合いがつかないことが多くてこれだけ大規模な殴り合いになったわけだけど、それを終わらせるのが一番シンプルに「困ってる人を助けたい」だけで戦うなのはだっていうのが暴力的に作品の方向性を決定づけていると思う。今作に限らず、なのはシリーズには悪い人が少ないわけね、だいたいみんな勘違いだったり騙されてたりですれ違ってるだけの根は優しい人だったりするわけ。それを解決する手段としてのパワーが魔法で、それを解決できる高町なのはっていうキーパーソンがこの作品内で一番優しい理由で戦っている。で、そいつが一番作中で愛される存在になって幸せに暮らしてる。なのはシリーズの世界観というか、そういうのをここにきて納得させられたなあと思う。

雑感

 まあなにかっていうと、いい話だったってことを言いたい。じわっとくるね。エピローグでエルトリア勢が故郷で元気にやってるとことか、それまでのぐちゃぐちゃがあってこその感動がある。いや、いい作品ですよこれは。