オタクは世界を救えない

『推しが武道館に行ってくれたら死ぬ』感想、アニメ化もするし強いオタクがついてるって思われたい

推しが武道館いってくれたら死ぬ(1) (RYU COMICS)

 2020年冬クール、アニメ化決定の『推しが武道館に行ってくれたら死ぬ』の話をします。なんか先行上映会にも行ったんですけどぶっちゃけ出来が良かったよぐらいのことしか言えないんでだいたい漫画の方の話をします。

 ちなみに一巻が無料で読めるらしいので是非。https://oshibudo.com/special/

地下アイドル“オタク”の話

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 まあよくあるアイドルアニメの派生ではあるんだけど、これの主役は「ChamJam」という地下アイドルではなく、それを推すオタクの方。主人公の女オタクであるえりぴよは、全財産を貢いでCDを積み、推しの舞菜との握手券をかき集め、真夏の炎天下で蒸し焼きにされてでもチェキを撮るため列に並ぶ。そういう話。
 でもそれぐらいだとなんかその辺に転がってそうなオタクモノって感じはするし、薄っぺらいあるあるネタを詰めただけの浅いオタクモノに辟易する毎日を過ごしている俺たちみたいな自称ガチ勢にとっては、そんなもんまったくウリにはならないことを当然俺もわかってる。ただ推し武道に関してはそれだけじゃない。正直、これを単なるアイドルモノとかオタクモノってジャンルで考えるのはだいぶ勿体ない。その理由を説明していこうと思う。

衣装がダサい

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  まずこのシーンが一巻に出てくる(アニメだと二話)。ChamJamはお世辞にも人気とは呼べない地下アイドルであり、当然クオリティもほどほど。なんかバスタオルを巻いただけみたいなのが新衣装でオタクたちは普通に落胆する。推しを持ち上げるだけではない。ここが重要。あと衣装は本当にダサいし、舞菜の服に鮭が刺さってるのもヤバい。
 これ以外にもChamJamの運営は弱小事務所らしくヤギや象と一緒にライブをしたり、ドアストッパーのCMを繰り出してきたりするんだけど、それに食らいついていくトップオタたちの戦いが普通にシュールギャグ的なそれとして面白い。

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ものすごいスピードでパンを裏返す

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 CDを積むための資金を稼ぐため、パン工場でベルトコンベアに乗ってきたパンを裏返すバイトをしているえりぴよ。これ以外にもコンビニバイトを始めたり、工事現場でパンを裏返すような動作をしたりすることで収入を得ている。

 ちなみにえりぴよのオタク仲間は全員フリーター。うちの一人は就職できないとかではなく、定職につくとライブに合わせた休みを取れないからとフリーターをやっているぐらい。要するに駄目な人間の集まりなのだけど、悲壮感はあまりない。そもそもオタクは人間ではないので、人間としてどうとかはさほど重要ではない。

ガチ恋勢がいる

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 ギャグシーンではないので取り上げるかどうか迷ってたんだけど、この部分は結構好きなので出していくスタイル。
 オタク仲間の一人である基さんは古参の主人公に比べるとわりと新参の部類で、年もまだ若いガチ恋勢。えりぴよともう一人のオタク仲間であるくまささんが割と古参で純粋にオタクとしてアイドルを推しているのに対し、基さんは将来的に推しと付き合って結婚することを目標にしているので、彼はこの作品において負のオタクを背負わされている感がある。
 推しと男と二人きりでいる目撃情報に踊らされたり、学生時代にテニス部だったことに怯えたり、人気になっていく推しを見て寂しくなったり、そういうところをちょくちょく差し込まれていくのが俺は好き。そしてそこに明確な答えが出ないまま、基さんがチョロいオタクとして活動し続けていくのも好き。それが良いとか悪いとかではなくて、オタクにも色々なタイプがいるので自分なりに強く生きてほしい。

やっぱり衣装がダサい

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 うーん、ダサい(可愛い衣装もあります)

可愛い

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 やっぱアイドルモノなので、基本的にアイドルは可愛い。

 ChamJamは七人組のアイドルグループで、まあ序盤はオタクやその推しがメインではあったけど、なんだかんだ原作は六巻まで出ているので他のメンバーの魅力まできっちり描かれている。わりとこの作者、個性が強いというか変なキャラを作るのが上手いんですねこれが。
 ちなみに原作は最初の頃こそオタクメインだったけれど、最近はわりとアイドル視点も増えてきて、ストーリーも野心が芽生えて真面目に武道館を目指していくような雰囲気が漂い始めている。それに応じてメンバーのアイドルに対する悩みとか葛藤とかも出てきて俺好みではある。

マスカットが落ちてる

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 この作者である平尾アウリは前作でも百合を書いてるぐらいには百合に強い人間なので、今作も結構そういう描写が出てくる。そもそも主人公とその推しが女女であるし、ChamJam内でもわりと明確な二人組を強調してくるからそれはセールスポイントの一つ。

 ただなんていうんですかね。俺は百合には詳しくないんでわからないんですけど、いわゆる男が書く性的な感じとか、そういうのがないんですね。清涼感が漂うというか、果実的というか。ちなみに↑のシーン、マスカットが落ちていること自体には何の脈絡もありません。

まとめ

 先行上映会なるものに初めて参加してみたのだけど、なんか普通にアニメ自体のクオリティが高くてびっくりしました。単純に面白いっすね。みるといいよ。

 あとアイドルモノのアニメ化なので、一応そういう方向にも期待しています。声優陣はほとんどスケジュールが開いてそうなのばっかり集めてるんで、たぶん運営的にも狙ってると思う。