オタクは世界を救えない

実写版『ヲタクに恋は難しい』感想、オタクに実写化は難しい

ヲタクに恋は難しい

 最近は面白いアニメ映画ばかり見ていたので、ここらで味変。ネット上では「クソつまらない」「原作を馬鹿にしすぎ」「ミュージカルとかいうゴミ要素」等々の高評価を獲得している実写版『ヲタクに恋は難しい』を鑑賞したので話をしていきたいと思う。

ストーリーについて

 脚本だか監督が福田雄一という人で、どうやら実写版の銀魂をやってたり、ドラマだと『勇者ヨシヒコ』シリーズを作ってる人らしい。ヨシヒコめっちゃ好きだったし、たしかに雰囲気似てるなーと思う部分も多かったけど、やっぱりクリエイターにも向き不向きがあれば当たり外れもあるっていう話。

 さて肝心なストーリーだけど、実は最初の10分ぐらいで主人公の成海(なるみ)と相手役の宏嵩(ひろたか)が付き合い始めた辺りでワンチャンを感じた。そもそも二人が結ばれるまでのストーリーだと思い込んでたから、序盤から飛ばしてきてこっからどう展開するんだろうという驚きみたいなものがあったのは確か。

 しかしその後の展開はお粗末と言わざるを得ない出来。付き合った後に二人がどうするかというと、特にどうもしない。デートしたりコミケに行ったりするけど、なにかストーリー上の目的があるとは思えない。基本的にはオタクカップルのドタバタ(?)をやる話であって、ストーリー性を求めるのはお門違いということなのかもしれない。でもそういう日常系は漫画やアニメでこそ映えるのであって、実写映画向きじゃないのでは?

 一応、オタクであることを隠している成海が男性と付き合うにあたっての障害をどうこうする、というテーマはあるのかもしれない。最初のオタ用語禁止デートだってその対策みたいな感じだと思う。ただ如何せん、話的にはいきなりオタ用語禁止って言いだしたりいきなりコミケが始まったりするだけなので、結局最後まで何をしたいのかがよくわからないストーリーだった。

 中盤からは樺倉とかいうパワハラ系DQN上司が出てきていきなりお仕事モノが始まる。そもそも彼女らはどういった会社に勤めているのだろう。主人公カップルが会社の同僚という設定なのにオフィスラブ的なことをまったくしていないので、会社の情報も一切把握できていない。

 しばらくは樺倉とのイチャイチャが続くのだけど、この辺、正直言ってまったく別の話が始まったのかと思った。オタクも関係ないお仕事の話だし、宏嵩は完全に霊圧を消してるし。
 あと余談なんだけど、主人公の仕事シーンって変な顔してふざけてるか仕事せずに同僚とくっちゃっべてるシーンだけなので、パワハラ上司に怒られるのは仕方ないなと思った。

 終盤に入ると、なぜか内田真礼のライブに参加している宏嵩を発見する主人公。ライブとかオタ芸の描写がだいぶ非現実的に描かれていて怒るオタクは怒りそう。
 その流れで宏嵩の自宅に行く二人。オタクグッズまみれの部屋を見て「キモッ!」とドン引きする成海だけど、自分を棚に上げてそんなに引くか? ってのは思う。豹変ぶりに引いてるって意味なんだろうけど、ちょっと表現的に「いやオタクのお前が引くなよ……」と感じた。

 で、ここから成海と樺倉さんとの絡みが始まったりするのだけどこれもよくわからない。主人公が樺倉相手にされるがままついて行ったりするのは、彼氏持ちの女としても面倒な上司への対応としても動機がないような気がする。

 まあ、主人公が内田真礼のライブを途中抜けしたのはよかった。本気で好きなわけでもないものを推すのはなんか違う。わかる。その後の女上司とミュージカルし始めたのはまったくわからない。というかこの女上司、どういう関係なのかもわからない。会社の上司だと思うんだけど会社に出てきてないしもしかしたら赤の他人な気もする。

 そして最後、樺倉さんの家で謎の修羅場シーン。主人公カップルじゃなくてお前らが修羅場するんかい。からの夜道で良い感じに締めて終わり。

 でも最後で一応テーマ的なことは喋ってくれましたね。

 宏嵩は成海と同じアニメオタクになればもっと会話も弾むのでは? と考えたけどそれは意味がなかった。二人が付き合うきっかけはオタク同士で気楽だったからだけど、決してそれが一番の理由というわけじゃない。「好きなことをやってる相手」のことを好きなら、それらを隠したり相手に合わせたりする必要はないよー、という話。ここはオタクと一般人でも、ジャンル違いのオタクでも同じことが言えますね。

 要するに「好きなことを大事にしよう!」という話ですね!(雑まとめ)

ミュージカルについて

 多い。すごく多い。10分に一回ぐらいは挟まれるので、全体では10回以上ミュージカルが入ってくる。インド人もびっくりの頻度なので、当然日本人である我々に耐えられる演出ではない。
 しかも一回が長い。きちんとBメロまでちゃんとやるので、正味全体の四分の一はミュージカルで占められている。クオリティも低いのにそんないらない。

 バーボンっぽいけど麦茶なの~だけは好き。

ステレオタイプなヲタク観

 一番オタクが気にするところだけど、正直ただの文句大会になるのであんまり語っても仕方ないような気がした。

 そもそもこの作品の原作は2015年が初出(間違ったらごめんなさい)。タイトルにもある通り今作で描かれているのは「ヲタク」なので、俺のようなニュージェネレーションを生きる「オタク」からしたら価値観が古く見えるのはある意味当然なのかもしれない。

 ネット上でよく見る意見では、「用語や構文を連呼すればヲタクっぽくなると思ってるのが痛々しい」や「ニコ動風に字幕が流れる演出を多用しすぎでウザい」、「オタクだからこう! という印象が押し付けがましい」等々。まあオタクモノで失敗するやつの典型だと思う。とにかくヲタク象というものを描写するために雑な描写をして、本物に「こんなんじゃねーよ!」とキレられるパターン。

 まあこれに関しては程度の問題はあれどその辺のオタクモノ全般に俺はよく思っているため、今更という感はある。

 

 ただ言えることがあるとすると、結構オタク構文やオタク用語とかはよく調べてあってちゃんと勉強したんだなあと感じる。コスプレとかもちゃんと実在するキャラ、グッズとかも流行ってるアニメの奴、にわか真礼ヲタになった宏嵩のマグカップがシャロちゃん(CV内田真礼)、ゲームも実際のモンハンやマリカーの画面(スイッチ版のモンハンとPS4のモンハンワールドを同時にやってるという謎設定ではあるが)、などとわりかしそれっぽい素材は揃えてあるんだなという印象はあった。
 けどやっぱり、素材揃えてそれを披露するだけではお話は作れないんだなという感想。
 業界モノの作品で、その業界のトリビアをいっぱい披露してくれるけど肝心のストーリーがつまらないという作品は珍しくもない。逆に題材のルールすら適当だけど中身は面白いキャプテン翼みたいなのもあるし、「実写版 ヲタクに恋は難しい」はヲタク観や原作の扱いどうこう以前に、ストーリー自体がそもそもよくないのが一番の敗因だと思いましたね。

まとめ

 クソみたいなクオリティのラブライブパロディをやったのが一番許せねえ。