オタクは世界を救えない

ライトノベルに『アオハル』というジャンルを定義することについて

 ツイッター上で話題沸騰。「ライトノベルにアオハルというジャンルはどうか?」問題がちょっと面白かったので、簡単にまとめつつ語っていきたいと思います。

概要

 そもそもの発端は、とあるラノベ系youtuberのこんなつぶやきから。

 流れとしては、

なんでも『ラブコメ』で括られるのはどうかと思う。コメディ少なめの青春・恋愛系ラノベに当てはめるジャンル名が欲しい

『アオハル』が丁度いいのでは?

ここでその他のオタクが現れて反論意見をぶちかます!

 という感じ。

 最近のラノベ界隈は青春系ラブコメブームなのだけど、たしかにコメディ要素がそこまででもないものすら『ラブコメ』にぶち込まれていてどうかと思う。だからそれ系の中でもラブコメと呼びにくいものの呼称を用意したい。……というのが発言のきっかけですね。発言者の方はyoutuberという立場上、紹介するためのジャンル分けをわかりやすくしたいというのもあったと思います。

 悪意的な深掘りを抜きにすると、あくまでもジャンルの名称をもうちょっと細かくしたい、というだけの話であって『アオハル』という単語はその一例とのこと。
 まあこれはたまに言われてることですね。ラノベというかオタクコンテンツのジャンルって雰囲気で適当に呼ばれてるものも多いし(なろう系、きらら系、セカイ系など)、わりとその場のノリで語られてた名称がジャンル名になったりもする(石鹸枠、僧侶枠など)。

 そんなわけなので、世のオタクは一つの意見としてこれを受け止め、せっかくだしジャンルについての議論を深めてみるのはいかがだろうか。的な。

 もっと詳細な流れを知りたい人は、ツイッターラノベ界の著名人が関連ツイートをまとめているのでご覧ください。

togetter.com

反対意見まとめ

そもそも『アオハル』という単語が気に食わねえ派

 アオハルという単語、多くの人にとって強い印象を与えているのは、日清のCMでワンピースキャラが「アオハルかよ」と喋るやつだと思う。好きな人ももちろんいるだろうけど、ネット上ではその押しつけがましい青春イメージと唐突な用語に嫌悪感を示す人間が多くいた覚えがありますね。恐らくそのイメージから「アオハル」という単語そのものを嫌って、オタクコンテンツにそんなキモいもんを持ってくんな! と怒ってる人間がまず多いんじゃないかって感じ。

新しい呼称を使わなくても既存のものがあるじゃないか派

 青春モノ、恋愛モノ、ジュブナイル等々、ラブコメではないそれ系のジャンルを指す言葉がないわけではない。普通に青春モノって呼べばよくない? という派閥ですね。
 たしかに『アオハル』はカタカナ四文字で収まりが良い感はある。しかし『ラブコメ』に対抗していちいち新しい単語を使う必要性があるかというと微妙なところ。昔からある呼び方でも事足りているのではないかという感もありますね。(そもそもアオハル自体が十年前から存在してる単語だというのは置いといて)

無理に新ジャンルを定義すると区切りが難しくなるよ派

 ラブコメとアオハルを分けたところで、どこまでがラブコメでどこからがアオハルかを定義しないといけないから面倒なだけなんじゃない? ということですね。
 語りやすいようにジャンルを細分化してるのに、かえって定義が面倒で語りにくくなるというのは困りもの。これは『アオハル』に限らず言えることですね。そもそも細かいジャンル分けは要らないよ勢。

『アオハル』は出版社的に使いにくいのでは派

 わりと商業的な話ですね。アオハルはそもそも集英社系で使われてた単語で、出自も少女漫画から。ビジネス的なやつが絡んでくると他の会社やレーベルがおいそれと使うのは憚られるから使っていないのでは、という感じですかね。

まとめ

 パッと見の意見を見ると反対派が多い印象ですね。
 でも賛成派もそこそこいて、やっぱり『アオハル』なラノベが好きな人とか、なんでもかんでもラブコメに括っとけばいいという風潮に辟易していたタイプのオタクはこういった新しい呼称に賛成している感じ。
 また、アオハル自体にこだわらなくても、商売的に新しく銘打ったジャンル名で出版社が売り出せばわかりやすくブームが来ていいのでは、という話も聞きますね。

 なんにせよ、新しいモノに忌避感を抱いて頭ごなしに否定するのは古参オタクの悪い癖。反対派でも賛成派でも、少しだけ考えてから自分の意見を表明すると意見が深まってよいのではないでしょうか。

 

 

PS.個人的な意見としては

 まずアオハルって言葉が本能的に嫌いなので、もし「アオハルラノベ!」なんて売り出し方されてるラノベがあったら絶対に買わないですね。この話題が盛り上がった根本的な原因は俺のように「アオハル」への嫌悪感を持ってるオタクのせいだと思ってます
 ……というのはまあ冗談として、そもそもこの議論をやっている間に一番気になったのは、やっぱりオタクは定義論が好きなんだなあということ。

 そもそもアオハルの定義とは? ラブコメの定義とは? ジャンル分けを細かくする意義とは? 恋愛モノ、青春モノという呼称は最近のラノベのジャンルを明確に定義できているか?

 正直なところ、オタクがやる定義論は絶対に答えが出ません。そもそもラノベの定義付けすら出来ていないのに、その中でアオハルなんていうふわふわワードが出てきても明確な定義付けが出来るとは思えない。
 なのでこの論争は、発端からしてかなり難解なことをやろうとしてるんですよね。そもそも定義が明確でないラブコメというジャンルから更にあやふやなアオハルというジャンルを分離させようという魂胆。たぶん逆にわかりにくくなると思う。「このラノベはラブコメなのかアオハルなのか!?」なんて議論が始まってもかえって面倒でしょう。これは『アオハル』に限らず、どんな名前でも面倒なオタクが語り始めると思ってます。
 そうなったらたぶんTLが気持ち悪いことになりますよね。俺は定義付け自体が無駄な行為だと思っているので、それを引き起こすような運動も微妙かなと。議論したところで、だいたいは議論が深まることもなく唾の吐き合いみたいになって終わるし。まあそんなごちゃごちゃを誰かがまとめてくれたのを見るのも面白いんだけどね。

 ただやっぱりちょっと思うけど、コメディじゃないものがラブコメ呼ばわりされてるのが違和感半端ないのは確か。ちゃんと青春モノとか恋愛モノとか、あるいはその作品単体への〇〇系ラノベ! みたいな呼び方が定着するとよいですね。