オタクは世界を救えない

『Sonny Boy』が面白いっていう話をするぞ!

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 正直舐めてかかってたけど、折り返しまで見た結果すごいことになってたアニメこと『Sonny Boy』が面白いって話をします。

そもそも何の話よ

 そこなんですよ。このアニメ、紹介とか見ただけだと何をする話なのかがよくわからない。これはちょっと売り出し方的にどうかとは思うし、俺も最初は「デスゲーム系か?またつまんねーもん焼き増ししやがって」とか感想で書いてたレベル。ただここまで見てみると、そういった目的地がわからない部分も含めて、"漂流"している彼らの物語なんじゃないかと言えなくもないなあと思った。

 閉鎖的な空間に閉じ込められた彼らは、最初その空間の中で上手い具合に生きていくことがテーマになる。その後、主人公の長良の能力がわかってからは元の世界に帰ることが目標になって話が進んでいくわけだけど、六話の最後でそれもなんだかよくわからない感じになる。
 一見すると大人しい流れのストーリーに見えて、結構一話ごとの話の動き方は大きい。基本が一話完結で、なんだったら六話までで1クール分の起承転結をやってる感まである。もちろんこれで1クールだったらしょっぺえ話だなで終わるところだけど、ここまでの流れを前半、つまりここから折り返しで更に話が動いていくと考えることを踏まえて、期待がすごいと俺は言いたい。

 まあ全体を通してよく表現されているのは、クラスの連中の人間模様みたいなものだよね。やってくうちに勢力みたいなものも出来たりして、思春期特有のめんどくさい感じとかも表現してきて、それが彼らの漂流生活のキモになる……と思いきや、実はその後の流れ的には本当にただワチャワチャしてるだけで何の意味もなかったってのがちょっと面白い。

長良の成長?について

 長良とかいう男、最初は主人公にしては地味で、なんの活躍もしない。なんなら二話三話とかも巻き込まれてるだけって感じであんまり活躍しない。
 ただ能力が判明してきてからは、ちょっとずつ成長、というか葛藤とかをして、次第にクラスの救世主だったり裏切り者になったりする。この変遷というか、長良の心境とかの変化と物語内での光の当たり方が一緒に変化をしてくのもいい。

 で、そんな長良が能力を使って元の世界に帰ろうとして、思惑を成功させるものの、そもそもの前提としてそれに意味がないってのがもうオタク好みするあれすぎて最高すぎる。元の世界もクソもなく、ただ"選ばれなかった方"である彼らが思考錯誤すること自体が無駄ってのが良い。それに気付くのが六話で、それを覆すなにかを残り半分で見つけようっていうのが良い。

 あと長良の能力について。世界を行き来することができるっていうハイパー中二病設定な能力なわけだけど、それもやっぱり前提として彼らが無意味な存在であることから、いくらいろんな世界を行き来しても意味ないってのがいいっすよね。なんか校長が言ってた「ただの観測者」ってやつ。いろんな世界を見ても、彼ら自身がただの無意味人間だからなんの意味もないっていう。

 長良の家庭環境が六話でわかるんですけど、まあ家がウンチなんですよね。長良には帰る場所がない。しかも学校にも居場所がなくて、進路志望も白紙。長良には帰る場所も向かう場所もなければ、その場にすら居場所はない。その上でどこか別の世界に行っても意味はない。たまんねえ……オタクが好きなやつだ……

どうせ世界は変えられない

 ここで六話放送後から公開されているロングPVを出していきたいと思う。余談だけど曲がいいですよね

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 で、ここで長良が言ってる台詞で、「どうせ世界は変えられない。それなら――」ってのがあるんすけど、まあ世界が変えられないなら自分を変えるしかないじゃないか――的なのが王道で、その通りに話が進んでもそこから捻ってきても面白そうだなあという感想です。

 あと朝風があき先生に誘惑されてあっちサイドに行ってしまうけど、そのときもしきりに「特別な存在」とか言われるんだよね。このクラスの連中、漂流してから得た超能力にしろ、元の世界での立ち位置にしろ、自分の特別性を重要視してる。まあ思春期によくあるやつなんだけど、それが結局六話で真相が判明してしまうと全部無に帰すっていうね。
 特に希が死んでるのとかたまんないよね。光が見えて一番元の世界に帰ることに前向きだった希が、一番元の世界に戻る意味がない(そもそも戻れないけど)っていう心を折っていく展開。何をやっても無駄。選ばれなかった側である彼らが、その無気力感の中でどういう話をやっていくのかがすごい面白そうですね。

まとめ

 こんだけテンポ悪そうな見た目してる癖に前半の締めまでを勢いよく仕上げてきたのはすごい。ソニーボーイとか言ってごめんな。