オタクは世界を救えない

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』ネタバレ感想、エヴァ世代でもなんでもないオタクの話をする

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 シンエヴァ、見てきたので話をしたいと思います。もちろんネタバレアリなので気にする人は避けてね。

 ちなみに自分はエヴァ世代でもなんでもない一般人なので、いわゆる二十数年のうんたらに決着をどうのこうのみたいなのは期待しないでください。

面白い?

 普通に面白かった。やっぱりエヴァなので今までの蓄積分ありきでの評価になってしまうけど、ちゃんと面白かった。
 序盤の第三村編はQの意味不明な展開と打って変わって説明もちゃんとあるしみんないい人で心が穏やかになる、中盤はなんかでけえ機体とかいっぱい出てきて盛り上がるし最終決戦って感じが熱い、終盤はなんといってもゲンドウの掘り下げとかシンジの成長が描かれていて物語を締めくくるに相応しいラストだったように思う。

 そもそも、あのエヴァが説明無しの展開とか抽象的な精神シーンじゃなくて、ちゃんとした回想や会話でキャラの説明をしたり現実世界でラストを終わらせたりしただけでデカい。そしてそれをやるだけでちゃんと面白いのがエヴァのポテンシャルを表してるみたいなところもある。

 加持さんが言ってた「君はイマジナリーの中ではなく、リアリティーの中で決着をつけたんだね」みたいな台詞がすごく印象に残ってる。そういう意図で言ったのかは知らないけど、やっぱり物語をテレビ版や旧劇のような抽象的な終わらせ方にするんじゃなくて、きちんと物理的に解決して綺麗に終わらせようっていう意志表示を感じる作品だった。

子供から大人へ

 これが見てて一番重要に感じたテーマかなあと思う。
 シンエヴァ、「大人」って単語がすごい飛び交うんだよね。ニアサードインパクトから14年経ってトウジたちは大人になってるし、ミサトさんも子供を生んだ。序盤、ヘタれてるシンジに対して「ガキ」と何度も罵るアスカがいたり、そのシンジが成長するにあたって「大人になる」という表現が出てきたりする。
 その中でも俺は、ゲンドウがシンジに向かって「大人になったな」みたいなことを言うシーンが結構好き。子供扱いされてきて、実際ガキみたいにウジウジしてただけのシンジが成長して大人になる物語なんだよな、これ。

 で、大人になるまでの過程も結構良いと思う。
 今までシンジが本気を出すシーンって綾波やアスカがやられてるときとか、そういう危機的な状況、言ってしまえばエヴァパイロットである主人公だからこそのシーンがほとんどだった
 それに対して、今回シンジが立ち直る流れってのは、綾波やアスカが根気強くシンジを見守ってくれてたり、かつての同級生たちが優しくしてくれたりしたおかげであって、シーン的にも特に派手さはない。これは見栄え的に好みが分かれるかもなあとは思ってて、やっぱりあんだけ陰鬱としていたシンジが立ち直るんだからもっとハッキリしたきっかけがあるべきじゃないか、みたいな考え方もできると思う。
 でも逆にそこが良いと思う。要するにこのシンジが立ち直る流れは、「普通」なんだよな。ごく普通の少年が大人になっていくように、なにも特殊な能力を持たないトウジやケンスケが大人になっていくのと同じように、そういう第三村みたいな普通の世界に触れてシンジが大人になっていくのは、彼をエヴァパイロットのサードチルドレンとしてではなくて一人の人間として成長させるために必要な過程だったんじゃないかって感じがする。

 エヴァってよく言われるけど、シンジの周りにイカれた大人が多いんだよな。要するに子供みたいな大人がめっちゃ多い。その最たるのがゲンドウであって、結局はゲンドウの子供染みたワガママがすべての元凶みたいなところまである。人類補完計画にまつわる云々はともかくとして、話がごちゃごちゃしてる大半の理由は、大人になれてない奴らのせいみたいな。
 その挙句、「Q」ではシンジに対して誰も状況を説明しないからシンジが暴走して大変なことになったりする。それぞれが腹に一物抱えてるのはわかるけど、ぶっちゃけただのコミュニケーションエラーなんだよな。
 で、それらの解決策としてシンエヴァで出てきたのが、「大人になる」という答え。でもそれって普通のことじゃん。エヴァに関係ない人だってやってることで、だからエヴァから離れて村に来て、そこで色んな物に触れた綾波とかのおかげで初めてシンジくんは普通に大人になれたんだと思う。ウジウジして家出してる彼を覚醒させるために必要だったのは、命の危機とか世界の救済とかじゃなくて、「そろそろちゃんとしないとなぁ」と感じるごく普通の感情だったわけですよ。

 碇ゲンドウの掘り下げ

 最愛の妻とか恋人とかが死んでしまって、その女のために命を捧げたり悪役になったりする二次元キャラクターは多い。その中でもトップクラスにこじらせてるのがこのお父さん。二十数年間も奥さん恋しさに自分の子供をいじめてたパパは他にいないだろうってレベル。
 ただ、ゲンドウは人を辞めてまでユイに会いたかったのに、今までその動機についてあんまり深く描かれていなかった。まあめっちゃ好きなんだろうなって気持ちは伝わってきたけど、大学時代の具体的な話とかもあんまなかった(よね? 詳しくないから知らんが)。

 そんなゲンドウの過去が、彼自身の独白によって語られたのは正直言ってめっちゃ嬉しい。両親がいなかっただとか、友達がいない陰キャだったとか、ユイだけが優しくしてくれただとか。それを知れたからこそ、ゲンドウが他者、もとい、自分の子供を怖がって遠ざけようとする行動をようやく理解できたってのがデカい。

 そしてなにより、これをシンジが聞き出したのがデカい。そもそもここに来てシンジとゲンドウの対話が実現するだけで熱いんだよな。父親に呼ばれて東京に出てきたシンジが、ようやく父親の口から知りたかったことを聞ける。いやあ長かったね。
 それもこれも、長い時間を経て、シンジがゲンドウに向き合えるほどに成長したから出来たことなんだよな。対してゲンドウは未だに自分の殻に閉じこもってユイーユイーってやってるわけで、だからこそ成長したシンジに再会して「死をなんたらかんたら出来るようになったか、大人になったな、シンジ」とかゲンドウが漏らすシーンでじんわりとするんだよな。
 子供に向かって「大人になったな」なんて親が言うシーンは割とありきたりで、フィクションノンフィクション問わず結構見かけると思うんだよ。でもそんなありきたりな親子のシーンを、この二人がやるってのがマジですごいことだと思う。あんなわけわかんない赤黒いのがぐるぐるしてる空間の中で、人類だとか使徒だとかエヴァだとかでドンパチやってた親子が、こう、息子の二十歳の誕生日に一緒に酒を飲んでしみじみと会話する、みたいなのをしてるのが、すごい、いいと思う。

ミサトさんを始めていい女だと思った

 まあキャラ的には嫌いじゃなかったけど、あんまりヒロインみたいに感じることはなかったんだよな、ミサトさん。それが今作、なんか結構好きになれた。なので割と死なないで欲しかった。まああれは死ぬポジションだしなぁ、仕方ないけどなぁ。

 すごい好きなのがね、自分の息子と同格のところにシンジを置いてくれるところ。ミサトさんはシンジを自分のせいで振り回したり、ニアサーを起こさせちゃったり、まあ色々とやらかしちゃってるからこそ責任を感じてるみたいなところはあると思う。まあその辺はシンジに対してだけじゃなくて、だからあんな似合ってないグラサンかけて素顔を隠そうとしたり、シンジに冷たく接したりすることで、自分の役目に没頭しようとするわけだよね。でも結局のところ、ミサトさんのそういう行動もガキ染みていて、一度失敗したからってムキになってる子供みたいな感じがある。

 いや、俺、エヴァの中でも破が結構好きなんだよな。シンジがやる気になってエヴァに乗るシーンも好きだし、そのシンジを後押しする「行きなさいシンジ君! 誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために!」も大好き。めっちゃ熱かったと思うし俺以外も好きな奴は多いんじゃないか。だからQでミサトさんがめっちゃ冷めてたのすげえ悲しかったし、なんかかっこつけて変な見た目になってるミサトさんはぶっちゃけだせえなって思ってた。
 でもそのミサトさんが、銃弾からシンジを守ってくれたときめっちゃ興奮したね。あれ、旧劇の踏襲なんですかね。ただ旧劇のときは恋人候補のお姉さんって感じだったのが、今回は完全に子を守る母になってたんだよな。で、なんかよくわかんねえ槍をシンジに届ける役目を自分で買って出る。この辺で昔のミサトさんに戻ってくれたみたいで、成長と同時に変わらない部分を見せてくれたのが熱い。や、終盤とかは一番活躍してたレベルのキャラだったし、Qでの意味不明な大人役を払拭するには十分な活躍だった。

真希波マリについて

 おっぱいが大きいイイ女だった……

 というのはともかくとして、まあシンジに最後選ばれたのがこいつだったのは割と意外だったよね。まあアスカがケンスケに取られて綾波はさすがに生還ルートがないだろうから、選択肢としてはそうなんだろうけど。ちなみに俺は途中までガチで鈴原サクラルートを押してましたね

 実をいうと、マリの設定とか映画を見てる間は全然わかってなくて、「結局こいつどこから出てきたんだ???」って言いながら見てた。ゲンドウやユイの大学メンバーなんですね。漫画版の最後の話でその辺がいきなり出てきてて、たぶんその辺の設定を踏襲しているとすると、たしかにマリがシンジに付きまとう理由も納得できる。ただ色々と清算してすっきりしたシンエヴァの中では、俺みたいなにわかだとわかりづらいキャラのままだったと思う。でも興味がある人は漫画版の最終巻だけでも読んでみると、なるほどってなると思う。

鈴原サクラについて

 かわいくない? 大して登場シーンないのにインパクトあるし、パンピー代表みたいな面して銃発砲するし、シンジのことを親の仇みたいに憎んでる癖してめちゃくちゃ心配してるとことかマジヤバい。あとプラグスーツ(?)のがすごくかわいい。

加持さんとカヲル君の会話について

 なんもわかりませんでしたー! 解説記事待ってまーす!

まとめ

 なんかもっと大事なことがいっぱいあるような気がしたけど、俺みたいなにわかが無駄に文字数だけ重ねても仕方ないと思うのでこの辺にします。

 ただ最後に一言だけ言うと、にわかでも一応数年かけてエヴァを追ってきててよかったな、と思うぐらい気持ちよく終わってくれたので、満足です。