オタクは世界を救えない

『ブルーサーマル』感想、着地失敗!

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 恵まれた序盤と着地点を見失った後半について熱く語りたいと思います。

主人公が可愛い

 今作一番の見所かつ救い所。

 主人公の都留たまきはド田舎から大学進学に合わせて上京してきた芋女で、高校時代にバレー部で熱血してた反動から、大学では恋愛とおしゃれなサークル活動に勤しみたいと考える大学デビュー志望の女の子

 しかし不慮の事故で航空部に絡まれることになり、避けていたはずの"体育会系部活"に入部することになる。

 ……とまあ、シティガール的な大学生活を思い描いていたたまきがそれとは反対の航空部に入ってしまって、という流れは王道。

 ただ原作が少女漫画なだけあって、意地悪な先輩やミステリアスな先輩と絡むたまきの話はラブコメの波動がビシバシと伝わってきて面白かったし、なにより航空部に入る入らない辺りで右往左往するたまきが非常にコミカルで可愛らしい

 こんな汗臭い部活には入りたくない! からの、根っこが元運動部だから売られた喧嘩は無視できずムキになって活動に参加してしまう辺りはかなり好感が持てる。

 あと意地悪な先輩役である空知との絡みもわりと面白い。というかこの辺のたまきの絵と動きがすごく強い。感情の豊かさや落ち着きの無さが表情によく出ててるし、脚本的にもたまきがわちゃわちゃしてるおかげで話が進んでくのはとてもわかりやすかった。主人公として申し分ないと思う。あとたまきがテニサーに入ってヤリチンにハメられなくて本当に良かったと思う

 個人的には青春ラブコメ部活モノとしてこの序盤の雰囲気のまま1クールアニメにしてくれてたらめっちゃ推してたと思う。ラブコメとして萌えアニメとしても、なにより大学青春モノとしても非常によかった。それだけに後半で墜落したのがもったいないと思う。

ドイツ、退部、朝比奈さん、姉

 中盤辺りから現れる謎要素色々。

 最初の斥候はお姉さん。ライバル校の主将として現れ、家族内の確執を匂わせてくるが実はただの逆恨みだったとかいうやつ。まあ序盤にたまきも父親の回想とかちょろっと流してたからなんか一悶着ある家族っていう設定なのかもしれないけど、作中ではほぼ触れられてないので謎シリアスその1って感じで首を傾げた。

 それから空知の退部。倉持に憧れを抱いてたり新人戦のメンバーだったりとなにかと熱心な彼が退部をする理由が、一言で言うと学業が忙しくなるから。まあ現実だったらありがちだろうけど、ストーリー上必要な要素だったのかがわからない。結局最後の大会にも出てるし、なんとなくシリアスパートの付け合わせに出されたエピソードにしか見えなかった。

 そして朝比奈さんの存在。悪役っぽい感じで出てきて自らの野望のため倉持を束縛する黒幕かと思わせといて、その実はただの差し入れお兄さん。まあ部にグライダーを買ってやる代わりに倉持を自分の駒にするってのは普通に悪い人かもしれないけど、逆に言うと部に援助するためだけに自分の将来を差し出す倉持っていったい……?

 なによりも倉持のドイツ行きが一番の謎すぎる。たかがと言っちゃなんだけどグライダー買ってもらうだけで自分の人生を捧げるって代償が重すぎるっピ……。

 それに行方不明になるくだりもだいぶ謎。つまりグライダーを乗り捨てて逃亡してたってことなんだろうけど、そこまでしないと逃げられないとかここは朝鮮半島かなんかなのか?

 そんな倉持逃亡事件のせいで、物語の中心はすっかりグライダーの全国大会からドイツに行ってしまった感がある。部活モノなのに部活部分がおまけみたいになり、恋愛要素も消えうせ、当初の重要キャラに思えていた空知はただの退部詐欺マンで終わってしまった。ライバル校はモブだったし、そもそも全国大会の背景がほとんど曇りで風景的にすら地味。その後のドイツをイイ感じにさせたかったのかもしれないけど、ドイツパート自体が意味不明すぎたので結局感動をするにしても難しい感じだった。

 久しぶりに「謎シリアス」の詰め合わせを見て、悪い意味で懐かしさを覚える始末でしたね。

つるたまが可愛いだけでも見る価値がある

 これはマジでそう。

 絵も設定も声もいい。これ系のキャラでこんなに完成度高いのは久しぶりに見た。序盤の空知との絡みで少女漫画もいいなって思えた。チビな割に体重がそこそこなのも元運動部で筋肉質なのを反映してていい。私服がダサかったりダサくなかったりするのもいい。うどんばっかり食ってるのもいい。だからみんなも最初の30分だけ見て興奮してから残りの1時間で絶望してもらいたい

 ブルーサーマル、おすすめです。