オタクは世界を救えない

映画『バブル』感想、バブル崩壊!!!


ネットフリックスにて先行配信、後に劇場でも公開予定の映画『バブル』を見てみたのでその話をしたい。

概要

 あまり話題になってる気はしない今作だけど、実は脚本が虚淵玄、キャラデザが小畑健。そしてそれを率いるのが『ギルティクラウン』、『甲鉄城のカバネリ』の監督である荒木哲郎という豪華メンバーにより制作されている。

 ただ、スタッフに金をかければ良い作品が生まれるわけではないということを痛感させてくれる作品でもあった。(あとギルクラとカバネリを実績にあげるのは逆効果だと思う)

 全体的なジャンルとしては、泡によって東京が沈没するというSFパルクールアクション、なんかいきなり現れる落ちモノ系の女によるボーイミーツガール、って感じ。ただ個人的には、まともにやれてるのはパルクールのところぐらいでSFとボーイミーツガール部分においてはかなり微妙だったかと思う。

SF部分について

 そもそもほとんど解説されてないねこれ。

 泡がなんなのかも、泡がどうして来たのかもわからない。崩壊と再生とかそれっぽい謎ナレーションは入ってたけど、設定が崩壊と再生を繰り返されすぎて迷走してるようにしか思えない。

 物語の後半でウタがいなくなってから泡の謎が解明されていくのかと思いきや、むしろ謎は深まるばかり。人魚のオマージュも設定解明に役立つどころかウタが消えるシーンをやりたかっただけなんだなーってなるだけだったし。

 あとお姉ちゃんってなに????

 それに、主人公にだけ歌(?)が聞こえることから主人公は特別な要素があるのかと思ったら、別にそういうわけでもなさそう。というか東京タワーで歌が聞こえてくるシーンが何回も回想されてるわりに、それを活かした説明とかもないからなんかただ単にエモいシーンをそれっぽく繰り返してるだけみたいに見える。

 まあなんとなくわかったのは、人魚であるウタが地上に出ようとした結果があの泡で、ウタが主人公とイチャイチャした結果にその罰としてまた被害が拡大して、最後にウタがいなくなったから被害が縮小して復興作業ができるようになった、という感じ?

 ただ、だとしたら随分と傍迷惑な人魚姫だなとは思う。自分が泡になって消えるだけじゃ飽き足らず東京を沈没させないでほしい。セカイ系か? 破壊と再生どころか破壊してるだけなんだが? 

 しかも当事者たちにその意識がないので、マジで勝手にエモい雰囲気だしてるだけみたいになってる。もしかしたらちゃんとした設定はあるのかもしれないけど、作中でその説明もなければそれを元にした展開とかもないから、ひたすらそれっぽい雰囲気のシーンを繋げてるだけみたいになってる。作中の人物も観客も誰も意味がわかってないのに、おっぱいの大きい眼鏡の姉ちゃんが「崩壊と再生は繰り返す」とかスケールのでかいことを最後に言って〆るから、いやそんな話じゃなかったよな???ってなって首を傾げるハメになる。でかいのはおっぱいだけにしろ。

パルクールについて

 よかったんじゃないでしょうか。単にアニメーションとしてだけど。いっぱい動いてて楽しそうだった。たぶんこれをやりたくてこの設定作って、理由とか展開は後付けなんじゃないかってぐらいパルクールの作画に力が入ってたように思う。

 上映時間のわりに中身が薄く感じるのも、パルクールに尺を取りすぎてストーリー部分が短くなってるからなんじゃないかとも思う。

 でもこんだけ重視するんなら、このパルクールというかバトルクールをもうちょっと意味のある設定にしてあげて欲しかった感はある。食料の奪い合いをパルクールレースの勝敗で決めるっていうデュエリストみたいな世界観とかは必然性がないし、最初に悪役っぽい雰囲気で出てきたチームはただの小物配信者だったし、伝説の選手みたいな感じのおっさんも別にいなくたっていいような存在だった。

 そもそもバトルクールのルールが整備されてたり、試合に審判や観客みたいなのがいたりする辺り、結構元から配信向けの案件だなって感じがする。水没してライフラインが断たれた街で食料を奪い合うってもっと深刻な雰囲気になっていいと思うけど、物語の前半部分とか見るとかなり和気藹々としていてお遊び感がすごい。「崩壊と再生」を取り扱う気ならもうちょっと世紀末感を出してもよかったと思う。

ボーイミーツガールについて

 雑。男と女を揃えるだけで勝手に恋愛が始まるタイプのストーリーだった。

 まず主人公とヒロインの距離の近づけ方が雑。他人に関わろうとしない典型的クールタイプの主人公がヒロインにだけわりとすぐ心を開くし、名前まで付けちゃってあげたりする。発達障害に両足突っ込んでるタイプのヒロインが主人公に懐くのはまあ出自からしていいとして、特にイベントもないまま兄弟みたいに行動を共にするようになるのは創作物として山もねえ谷もねえ状態なので微妙だと思う。あとすぐに顔を赤らめるのはキモイ。主人公が心を開くためのきっかけがが欲しかったし、それがないから告白のシーンも一足飛びに見えてしまう。

 ウタに関しても、主人公が理由で人間になったのはわかるけど、主人公の何が理由でそうなったのかがわからない。なんか推測できそうな要素はいくつかあるけど、その辺は作中でもふわっと「まあこれ系は主人公とヒロインがくっつくもんだから……」程度の考えで扱われているように見える。一言で言うとご都合主義。

その他

 目に見えて突っ込みたくなるのは、悪役感満載で出てきた配信者のチーム。でも実はただの小物チームで、物語の真相とかには一切関係ない。ほんとにパルクールでの盛り上げ所を用意するためだけの存在だった。しかも終盤で靴を貸して(売って?)くれるという親切さん。なんだこいつら。

 人々の過去というか、どうしてあの水没した東京にこだわるのかもよくわからなかった。バトルクールは生きがいらしいけど、それだけ。ただ単にパルクール好きな若者連中が集まってるだけならそれこそ配信した方が人気者になれて楽しかったと思う。

 あとヒロインの声優は、オタクが大嫌いなtiktokで活躍中らしいナントカって人らしいが、声も低くて合ってないし演技も下手寄りだったのでなんで採用したのかわからない。

 おっぱいの大きい姉ちゃんは研究者枠らしいけど、あんまり役に立ってはない。「崩壊と再生」は置いておくとして、中盤で「ウタが来てから……?」と何かに勘付く素振りは見せてもそれでなにかを教えてくれるってわけでもないので、マジでただのナレーションおばさんでしかなかった。

 あとおっさん。最初はコーチ的な奴なのかと思ってたらそうでもない? 審判なのか、見届け人的なやつなのかわからない謎おっさんだったが、最後らへんに足を失った伝説のアスリートだったことが発覚。クソどうでもよかった。

まとめ

 家で無料で見るのがちょうどいいアニメですね。ゴールデンウィークのお供に。

 あと今更だけど虚淵要素まったくなかったね。個人的には劇場版ギルティクラウンってでした。